Sunday, December 25, 2011

Amon TobinのISAMツアー、すごかった

オラ・アミーゴ。

 

(↑ツアーのトレーラー。この最初の静止画に映ってるルービックキューブみたいなのが、舞台装置の仕舞い方の図。複数の立方体が、貨物航空機の規定サイズいっぱいにパズルのように詰め込まれてる。)

何かの拍子にある音楽が耳について離れず、頭でずっと鳴っているということありますよね? 10月26日にNYはブルックリンのメイソニック寺院でアモン・トビンを見たあとぴったり1週間ずっと、このライブで演奏された曲がかわるがわる、私の脳内でシャッフルされっぱなしになっていた。その度に記憶が呼び戻され、しばし思い出してから我に返っては「ワオ。すごいものを見た。」と感嘆してた。

すごかった。Amon Tobin、ISAM Tour。

ヨーロッパ、アメリカで、フェス公演以外が全てソールドアウト。私が行ったブルックリンも、追加公演2回含め全3公演売り切れ。

(↑ISAM はアイサムと読みます。)

(↑会場 Brooklyn Masonic Temple の外観)

10月26日、水曜日。19時開場、20時開演。会場は寺院で、クラブっぽい雰囲気は全くない。キャパ1000人前後。(ツアー中で小さい方の会場。シカゴは5000とか。)バーも折りたたみのテーブルで、プロのバーテンっぽくないフツーの若者がクーラーボックスから缶ビール(何故かアサヒ・スーパードライのみ)などを出して売ってる。客は先に別のテーブルでチケットを買って交換する学園祭的スタイルで手作り感が落ち着く。開場を並んで待って入った客はほとんど皆ステージを一望できる二階の席を確保し、ゆったり待っている。



(↑こんな感じの二階席。)

私は踊る気満々でフロア最前列で待つ。木の床だ。

入場から2時間の9時半頃、Ninja Tuneの後輩女子シンガーEmikaのオープナーでじらされ切ったころにやっと会場は満員。カーテンが開き舞台装置がお披露目されるとすぐアモン登場。最初の一音からことごとく立ちつくした。しばし目が点、耳がダンボ。そして数秒後、我に返った。「うっはー!」と笑うしかなかった。なにこれ??


(↑End Song from Melissa Phillips on Vimeo).

このビデオは音質はひどいけど、この映像が目の前いっぱいに広がってて後ろには1000人の観客、爆音でアモン王子がプレイしてるところを想像してみて欲しい。鳥肌。

ステージ上に立方体が積み上げてある。私の目の前にはちょっと大きめの立方体、その中にアモン・トビンが入っていて、時々ライトが付いては彼がビートに合わせて体を動かしながら演奏してるのを映しだす。しかし全体に目をやると、静止してるはずの立方体が音に合わせて動いてる(踊っている)ようにしか見えないのだ。(え、私しらふだよね??) 

唖然と立ちつくしてはたまに歓声をあげる。まに見回しても周りの客もみな同じようにただただ間抜け面してたと思う。始まって40分くらいか、やっと、ダンス・ミュージックと言えるようなビートを刻み始めた。キタキター!と思う間もなくビジュアルもさらにパワーアップして頭くらくら体びりびり。これはヤバい。(Youtubeに投稿されたビデオのコメントで「アシッド食ってなくてマジ良かった!ww」ってのがあった。)ネクストレベル過ぎであご外れるわ。



音とビジュアルのシンクロ率が異常。


(↑Amon Tobin from Ciara Phelan on Vimeo). 

目の錯覚具合も異常。

これ目ですか耳ですか。私の感覚、混乱しております。

アンコールになってやっと耳慣れたダンス・ビート。かっこええ! そうそうアモン・トビンってヒップホップだってたよね、って。進化しすぎ。

紙吹雪、2回のアンコール、鳴りやまない歓声。タバコを手にもって何度もおじぎするステージ上のアモン・トビン。泣いてたように見えた。たぶん泣いてた。納得。手で胸を押さえて、頭を下げていた。ひとり、ステージ上で。




(↑私が見た日。)

なんとかホテルに帰ったら、紙吹雪が靴や服の中に入ってた。後で知ったけど、どっかのクラブでアフターパーティがあって、アモン・トビンがDJセットやってたらしい。そんなことも知らぬまま私は幸せに燃え尽きてました。深夜前に。


何だか分からないけどすごく、美しいものを見た。2ヶ月経つけどやはり、それしか言えない。それ以上言ったら無粋。でも。LEDの洪水が、ヘビーな機械音と壊れるぎりぎりのビートが、なぜこんなにも体に染みていくのか。飛び立つ航空機、リアルタイムで立方体に投影されるアモン、意志を持った群れのように動く立方体。なぜ心の真ん中を優しく撫でられたような震えを感じるのか。外は激しいビート、中は潮が引いていくように静か。この人はどこかにたどり着こうとしている。いや、どこかに戻ろうとしている。暴力的なまでにもがいているようで、芯は悠然と。彼の中だけにあるどこか美しい場所に向かう旅に、確かに私は同行していた。


今のところ予定されてる最後で唯一のISAM Tour公演が、12/31サンフランシスコの年越しイベント。お近くの方はぜひ。特にメディア・アートクラスタの皆さん、ライブ音楽好きの皆さん。間違いなく、ひとり×ライブ音楽の、現在のひとつの頂点にいる。これが10年20年後に美術館に置かれるのを待たずに、会場に見に行くべきと思う。先日ぶらり入った美術館で20年前のナム・ジュン・パイクの作品が静かに置かれているのを見て、それだけは年を超える前に言っておこうと思いました。生に飛び込め。切符を受け取れ。ハッピー・ニュー・イヤー!





技術的なところをもうちょっと知りたい人は、この制作裏舞台のビデオを。


ISAMの音の作り方はこちら。

ガラージ・ア・トロアの現在

秋ツアー完了記念(苦笑)


ガラージ・ア・トロア インタビュー



Garage a Troisのスタントン・ムーアは過去に数々のドラム専門誌を飾る名ドラマーで、ニューオリンズ出身のバンドGalacticでのファンキーなプレイで最も名前が知られている。GalacticGarage a Trois でのドラムプレイの違いを彼はこう語る。「どちらもグルーブがベースにあるバンドだけど、 Garage a Trois の方が実験的。どちらも自分の中の音楽性の違う面だよ。」では Garage a Trois の、ステージが爆発するような瞬間には彼の音楽性のどの面が表れているのだろうか? 「あの音は、、、4人が集まってみんなそれぞれプレイして、それでああいう風な音になるんだよね。」彼ほどのミュージシャンでも、あの音のエネルギーを言葉に置き換えることは難しいようだ。


スタントンとともに Garage a Trois のオリジナル・メンバーであるサックスのスケーリックはあるインタビューでこう語った。「僕らはマスメディアを利用することはいつも不得意だった。ファイン・アートでも音楽でも何でもいいけど、いわゆる一般的に成功してる人たちって、自分たちの作品をちゃんと説明できるんだよね。僕たちはそれをうまく出来た試しがなくて、だからすごい成功もしてない。でも多分それは良いことなんだと思う。音楽に集中できるし、やりたいこと何でも好き勝手に出来るから。それが重要でしょ、MTVのリクエスト番組とか、ブリトニー・スピアーズとかそういう、本質より上っ面、みたいなのじゃなくて。」

シアトル郊外で育ったスケーリックは音楽好きの両親の影響でサックスを始め、音楽を演奏する楽しみをすぐに覚えた。そしてスケーリックの父親はいつも彼をジャズ・コンサートやフェスティバルに連れて行った。「70年代と80年代にツアーしてた有名バンドはほとんど見たね。小さいバンドも。それから幸運なことに近所の幼なじみがジミ・ヘンドリックスとかツェッペリン、ドアーズのカセットを全部持ってたんだ。ラッキーだったよ。中学高校ではオーケストラで演奏したし、色々なジャンルの影響を受けたのは良かったと思う。」スケーリックはその後も自分のスタイルを追求し続け、ピンク・フロイドのジョン・ウォーターズのツアーに参加した際にはかのウォーターズをして、「『Money』のサックス・リフを完璧にこなした唯一の奏者」と言わしめた。

Garage a Trois のその他のメンバー、ヴィブラフォンとパーカッションのマイク・ディロンと、最も新しいメンバーであるキーボードのマルコ・ベネヴェントもGarage a Trois以外に多くのプロジェクトに関わっており、4人が集まる時間を作るのは至難の業だ。最新アルバム「Always Be Happy, But Stay Evil」は、それぞれが活動の合間に用意した作曲のアイデアを持ち寄り、今年の1月にニューオリンズで録音された。マルコ・ベネヴェントはその体験を振り返る。「録音とオーバーダブを4日間で終えたよ。素晴らしいエンジニアのランデル・ダンと一緒にね。ゴージャスなスタジオなんだ。スティービー・ワンダーの『The secret life of plants』やカンザスの『Dust in the wind』が録音されたところなんだよ。反響室もあって、ランドルとスケーリックと一緒にそこで色々実験したのがアルバムのインタールード曲に使われているよ。」こだわりの名プレイヤーばかりが集まるこのバンドの、スタジオでの作業についてスタントン・ムーアはこう語る。「色んな音で溢れて、にぎやかに素早く進んだよ。みんな慣れた作業だからコンディションは最高なんだ。初めから全力で止まらず、持ってきたものを並べていくだけ。ひとつ終えてはすぐ次って具合に。たった3日で全部片付けられたのも、普段からライブで同じ事をやってるからだね。」

Garage a Trois にとって5枚目のアルバムとなるアルバム「Always Be Happy, But Stay Evil 」について、過去4枚のアルバムに参加しているヴィブラフォンとパーカッション担当のマイク・ディロンはこう言う。「チャーリー(・ハンター)と3枚ほど、素晴らしいアルバムを作って、それからマルコが参加した。チャーリーがいたときGarage a Troisはクールな、インスト・ファンクのバンドだったけど、今は70年代っぽい変てこロック・インストのエンニオ・モリコーネみたいな、、、エンジニアのランドル・ダンに言わせると70年代のサントラ風。」ミキサーなど使われた機材も70年代のものだという。「ぜひ良いステレオで音量上げて聴いて欲しい。録音したのが老舗の古いスタジオで、壁から70年代の空気が伝わってきた。最高だったよ。」

アルバムのカバーアートは、スケーリックの娘ココが描いたものだ。「彼女は小さな天才。あの絵を描いてから言ったんだ、『Always Be Happy, But Stay Evil (いつでもハッピーで、だけど邪悪でいなさい)』って。いやもう完璧でしょ、あらゆるレベルで。タイトルをどうしようか困ってて、時間もなかった。それで、『ココが描いた絵をカバーにしたらどう?』ってことになった」とマイクは振り返り、「スケーリックはココに児童労働の最低賃金を払ったよ。アートワークを安く上げるのに最高の方法でしょ。最近は組合もうるさいし不景気だから、しゃれたアーティストを雇うかわりに身内でなんとかまかなったよ」とおどける。

これだけの個性あふれる実力派プレイヤーが揃った Garage a Trois で、メンバー同士が衝突することはないのだろうか? マルコはこう答える。「今のところないね。音楽ってのは僕たちが、友達とシェアするためのものだから。生きるために、成長するために、他の人とプレイするんだ。」それについてマイクはこう言う。「僕らは独裁者みたいに、他のメンバーに命令するために演奏するんじゃない。音楽を通じて、むしろその人らしさを引き出したいんだ。」そしてマルコが続ける。「スタジオで組み立てた曲をもって今度はツアーに出るとまたすごく楽しい。ライブではお客さんの反応があって、それにこちらも影響を受けるから。」

Garage a Troisのライブは、アルバムよりさらにアップビートで熱く展開することで知られる。「あらかじめ組み立てられた曲を演奏しようとするときに、曲の構造によっては即興の入る余地が見つかることもある。ライブで何かを起こしたいなら、その場にいるみんなとコミュニケーションするんだ。 観客にプレイしちゃダメなんだ。観客とプレイするんだ。スタジオでは曲に仕え、ライブでは観客に仕える」とスケーリックは語る 。「昔から言うように、『部屋ごとプレイする』んだ。良いアドバイスだよね。」

マルコ加入直後のツアーでは見られなかった、お揃いのジャージとTシャツを着るステージ演出も最近では復活した。音楽以外の要素についてスケーリックはこう言う。「全ては音楽のためだ。ワンパターンに陥らないことが大事なんだ。芝居がかった演出は場を刺激できる。お客が寝てたら起こさなきゃ! 空気を生き生きと、関係を新鮮に保ってないと。観客とバンドの関係、それが最重要事項なんだ。」

Garage a Troisの音楽は、各プレイヤーの魂から世界に向けてまっすぐに湧き出てくるものだ。スケーリックはかつてこう語った。「俺は現実にコミットしている。俺はジャンキーじゃない。色々試すのは良いと思うけど、世界はあまりにも多くの美と、愛と人間からのインスピレーションに満ちあふれている。人生には現実の中でやらなくちゃいけないことが山ほどある。醜く美しい全てがたっぷりと。だから間違いなく俺は、やることなすこと全てに、それを映し出して行きたいんだ。」

Garage a trois :http://www.garageatrois.net/

written by 山平宙音 on 2011/8/18 based on the articles including;

http://www.jambands.com/features/2011/05/06/marco-benevento-music-is-for-sharing

http://www.jambands.com/features/2011/05/13/garage-a-trois-ever-happy-always-evil

http://www.staythirstymedia.com/201107-059/html/201107-mike-dillon-skerik.html

http://www.nola.com/nolavie/index.ssf/2011/05/an_interview_with_jazz_fest_la.html

http://www.honesttune.com/content/view/3237/49

http://www.citypaper.net/blogs/criticalmass/QA-Garage-A-Trois-saxophonist-Skerik.html

http://www.jambase.com/Articles/1615/SKERIK-%7C-SERVING-THE-MUSIC