Wednesday, April 21, 2010

Phish 3D special 4/20 screening に行ってきた


映画の一般公開は4/30からだが、昨日4/20に全米で9館で特別上映があり、幸い近所に上映館があったので行ってみた。チケットは15ドル。ショッピングセンターに併設された、よくあるアメリカ郊外の大型シネコンである。

上映の2時間ほど前に会場に到着したが、並んでる客などは見当たらない。映画館前が広場になっておりその横にはアイスクリーム屋もあるので、噴水を眺めながらアイスクリームを食べて待つ。

ちょっと脱線するが、このアイスクリーム屋はBen & Jerryといって奇しくもPhishと同じバーモント州のバーリントンが本社である。パッケージには創業者のBenとJerryの写真が載っているのだが、2人揃ってチーチ&チョン風。(こんな感じ。)独創的で楽しいフレーバー展開が特徴のBen & Jerryであるが、なんと"Phish Food"というフレーバーがある。

(この写真は、スーパーで買ったのを自宅で撮影したもの。)チョコレート味のアイスクリームに、白いマシュマロ、マーブル模様のマシュマロに魚の形をしたファッジが入っている。アメリカ楽しい!って感じのご機嫌なフレーバーである。

さてPhish 3Dに戻る。上映30分前に会場に入る。入り口でPhish Tシャツを着た推定50代の女性に超笑顔でウエルカム・トゥー・ザ・ショーと言われ、ソールドアウトだから早く席を確保した方が良い、と言われて急いで会場に入るが席はまだ1割弱しか埋まっていない。良い感じの席をゲット。

上映直前でも満席率は7割程度。どうやらかなり余裕を持ってチケットの数を設定したようだ。ありがたい。客はPhishのコンサートの客を平日仕様にした感じ。ご機嫌だがちゃんと運転できそうな。通常の映画上映ではまず見かけないことだが、入場したときからずっと銃を腰に下げているらしき警備員が室内にいて、何かを確認するように時々スクリーン前を横切る。「支配人」っぽいスーツの人も現れて警備員と何やら話し込んだりもしている。「特別上映」なんだな、という雰囲気。この警備員は何と上映中もずっと、壁際に立っていた。確かに警備員でも配置しないと、上映中に客がマリファナを吸い始めたり椅子の上で踊り始めるなんてことも簡単に想像できる。

上映開始。歓声が上がり、拍手が響く。

ライブの音源を聴いて、「うわーライブで見たい」って思うことがあるでしょ? 良い演奏だったり、良い環境で再生したときこそ心底思う。悔しさ。Phish 3D、演奏開始後5秒でその悔しさの最大級のものに襲われました。「生で見たいっっ。」「踊りたい。」あまりにもこそばゆい。家の音響と違って低音も効いているのでマイクのベースも迫力あるわ〜、なんてときめきも吹き飛ばしてしまうくらいの身の置き場の無さ。プラスチックの眼鏡かけて椅子に座らされて、楽しそうに踊っている姿とバンドの演奏を見て、そして画面の外にはリアル警備員。どんだけマゾ〜?

演奏はさすが。トレイの指にぐっと見入る。超冷静に。これが正しい楽しみ方かなあ、なんて思いながら。あまりに寂しい。ちぐはぐ。みんな元気?! ライブだったら皆の笑顔が見られるのに。みんなと踊れるのに。

思わず途中で一服しに外に出て、まだ40分しか経ってないのかぁ・・・(上映時間は2時間20分)と思ったのを覚えている。長かった。やりきれない2時間20分を過ごした。笑ってはいけない図書館ならぬ踊ってはいけない映画館。ほとんどコントであった。前の方の席だったので後ろは見えなかったが、気配や音からして全員おとなしくしていたと思う。ただし後半のお馴染み曲では後ろからグロースティックや風船が飛んで来て、投げ返す人たちも多く、個人的には警備員が注意しないかヒヤヒヤしたが。「ウイルソン」でもウィルソンコールをしている人はおらず(いても小声で)、みんなでじっと見守り焦らされている様子は"awkward"(きまり悪い)という表現しか見当たらない。小声のウィルソンってそれ何てプレイ?

そして3Dに関しては、アバターと比べると「子供騙し」感があったことは否めない。アバターが静かにいつのまにか画面に入り込んでいるような感じがしたのに比べて、Phish 3Dは昔ながらの飛び出す映像に近い印象だった。画面の場所によって見にくい所があったし、視点を合わせるのに苦労した。(これは劇場・機材によるのかもしれない。)たぶん、没入感でいうと普通のIMAXのが良いんじゃないかな、という気がした。眼鏡邪魔だし。3Dは置いといても、DVD化されて家で見るにはとても良いビデオだと思う。普通のセット、アコースティック、ホーンとコーラスあり、とバリエーション豊富だし。家なら、踊ったりお酒飲んだり(この映画館は禁酒)好き勝手できるしね。

上映後にはピカピカのポスターが配られた。オフィシャルサイトで6ドルで売ってるのと同じだと思う。よれよれの客にスタッフと間違えられて、ポスター下さい、って言われた。彼はご機嫌過ぎて運転できまい。

結局は何を期待するかってことだ。ライブの楽しさを期待せず、じっくり冷静に音を聴く機会と考えるとかなり心地よい体験であった。でも、冷静に分析的にPhishなんか聴きたくないんだなあ私は、って気づいてしまった。2010年4月20日平日、画面の中のハレと覗き込むケの切ない逢い引きであった。

PHISH 3D - IN THEATERS APRIL 30TH from Phish on Vimeo.

Monday, April 5, 2010

映画の楽しみ方(続・ハートロッカー)

先日のハート・ロッカーについての投稿に、面白いコメントを頂いたので紹介します。

町山智浩さんがハート・ロッカーを紹介したポッドキャスト。
http://www.tbsradio.jp/kirakira/2009/07/2009731-1.html

ライムスター宇多丸さんがハート・ロッカーについて語ったポッドキャストがこちら。
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20100320_hustler.mp3
(TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル、第154回(2010年3月20日)放送のザ・シネマ・ハスラー)

で、その宇多丸氏の評に対してtwitter上で町山氏から突っ込みが入って、宇多丸氏の番組に町山氏が電話で参加する形で実現した対談がこちら。
http://www.tbsradio.jp/utamaru/2010/03/1552010327.html
(下の方にスクロールして下さい。3編に分かれてます。)


対談は1時間以上もあって、聞きごたえあります。宇多丸氏は「ハート・ロッカー」のストーリーと終わり方について「これでいいのか?」と思いつつ「楽しんでしまった後ろめたさがある」という感じでとまどい、作品の分かりにくさを指摘しています。それに対して町山氏は「明らかに作者の意図は反戦」、「あからさまに戦争を批判するとアメリカ国内で叩かれるので遠回しな表現をしている」、「分かる人には分かる」、「評論家としては『分からない』じゃなくて、その意図を汲んで伝えるべき」などなど。聞けばどちらの意見にもうなずけます。特に町山氏はアメリカに住んでアメリカに納税しているので、アメリカ人の感覚により近いはずと思わされます。


それから、映画監督の黒沢清氏がハート・ロッカー(とアバター)についてコメントしている動画がこちら。
http://www.ustream.tv/recorded/5225458
(国際シンポジウム「クール・ジャパノロジーの可能性」2日目。他に東浩紀、村上隆、宮台真司などが参加してます。)


「ハート・ロッカー」について黒沢氏、「最低の映画」と言い切っています。ここまで迷いがなく否定するのは清々しい。(該当部分は22分目くらい。「アバター」の感想は17分目くらい。)

この動画は、他の部分も面白いです。村上隆氏が自身の戦略について語っていたり、宮台氏が黒沢氏の映画について「リア充批判ですよね」とまとめていたり。


語る気にもならない映画のが多く公開される中で、「ハート・ロッカー」が人に何かを考えさせる、言わせるパワーがある映画だということは確かなんだと思い至りました。こうして見た人が議論する、それだけでも価値のある作品じゃないかな、という気がします。うまくまとめようとしたワケじゃないんですが。そういう楽しみ方も映画にはあります。

個人的には、宇多丸氏のとまどいに共感できますが。



ワシントンDCにも桜があって、観光名所になっている。国会議事堂やワシントン・モニュメントの近くのタイダル・ベイスンという池の周りに、日本から送られた数千本のソメイヨシノが生息している。見頃の先週末に行ってみたら、満開をちょっと過ぎた頃。木の下でお花見をする人たちもたくさん。(アルコール禁止は禁止。)池にはレンタルのボートも浮いてて、不忍池を思い出す。人ごみを歩くスキルがすっかり落ちていることに気づく。

google画像検索で見つけた写真ですが、こんな感じ

キレイなんだけど、ワシントンDCの桜はぐっと来なかった。まだ私が「お客さん」だからかな。それに新入生も新入社員もいないし、私の生活は相変わらず淡々と一人だし。新しい始まりを祝うこともない。なんだか気温も一気に上がって、日本の春のあのもやっとした感じもない。いきなりもう、さわやかな夏である。ぼんやりと、うとうと、そんな感じじゃない。

それから大混雑のモール周辺を散歩して、ひときわ目立つ、ピンクのお揃い服の子供達を見つけた。桜の花びらが散る公園で、ピンクの子供たちが走り回る。はかない若さが目にまぶしい。思わずiPhoneを取りだし写真を撮った。黒いTシャツの後ろ姿はお父さんらしい。私の横には、ベビーカーの横にお母さんらしき人が、他の人と話していた。耳に入った会話によると、この5人の子供のうち、1人がそのカップルの子供で、残りの4人は養子なのだという。

しばらくこのピンクの子供たちに見入ってしまった。そんな春もいいもんだ。