Thursday, March 18, 2010

アカデミー作品賞"Hurt locker"を見た


最近まで、戦場が舞台とも知らなかった。アカデミー賞の授賞式を見るまで、監督の元旦那がアバターのジェームス・キャメロンとも知らなかった。アカデミー賞の最近の動向など全く追ってないので、どの辺が評価されたのかも知らない。原案がどこからやって来たのかも知らない。なのでその辺を想像してみることもせず、ただぼんやりと私の感想を書いてみようかなと思う。そもそも"hurt locker"の意味も分からない。*

これから見る予定の人は、この先は読まない方が良いんじゃないかな、と思います。

主人公ジェームスの戦争中毒を描いている、としか読み取れなかった。だとしたら、あまりにナイーブじゃないだろうか? ナイーブは英語だと、世間知らずとか、うぶ過ぎること。戦争=命の危険を伴う争いというものが、社会制度で補い切れない人間の欲望=生理を満足させるというのは皆なんとなく知ってるんじゃないかと思う。昔の文化人類学の有名な人が、そんなことを言っていたよね確か。**あんまり最近映画を見てない私ですが、しょーじき、「今さら?」って感じはした。

台詞は少なめで淡々とした映像が多いので、観客が戦場の現場にいる疑似体験をできる臨場感溢れる映像、を目指したのかな。確かに緊張感はすごくあった。場面によって画面の色合いや質感が変わるとこも、演出の基本的なスキルの高さが感じられて心地よい。でも例えば戦場での人間の心理を描いた、、、と考えると例えば「フルメタル・ジャケット」が思い出される。それと比べたらまぁマイルドな緊張感。そしてジェームスに自分を重ね合わせて感じ入るほどには彼に関する説明が多くない。それ以前にどうしてもそれぞれのカットが美しいと感じられない。ベタな絵だなぁ、って思うばかり。

最後の方になってくると、だいたい言いたい事が分かってきた気がした。結局最初に引用されてた"war is drug"ってこと? すげー小さいこと言ってない? だからどうしろと? でも、確かに丁寧にそれを表現している。舞台は戦場で激しい感じなんだけど、映画全体としてはなんか女性っぽいな、って。つまらんことを回りくどく、いや違う細かいことを丁寧に、言う姿勢が。

でも、ここで私が忘れているのは、戦争は今も現実に起こっていて、今住んでいる国の政府は戦争にたくさん人を送っているということだよね。今、カート・ヴォネガットのエッセイを読んでいるんだけど、この人は第二次世界大戦中にヨーロッパで一晩に13万人くらい死者が出た空襲を体験している。この人がそれを描くとき、ユーモアもたっぷりで物語として面白く読めるように書くんだけど、それはあくまで終わったことだからだよね。

でもそう、社会へのインパクトとかを考え始めると、アカデミー協会が何を考えてこれを選んだのか、何とでも受賞理由を説明できるアバターを押さえてこれに作品賞をあげたのか、考えざるを得なくなる気がする。私だって映画を単に好き嫌いで語っていいのなら、簡単に言える。好みに合わなかった、と。でも他の芸術形態と違って、幸か不幸かそれ以上の力が持てるのが映画だ。政治の手段にもなりうる。そのために芸術的快楽に関して禁欲的になることもあろう。でもやっぱり、好みじゃないな。映画には、はっと息を飲む映画的な瞬間を期待しちゃうから。戦争は批判すべきシステムの一部でしかないと私が感じてるからなのかもしれない。よく分からない。

*"hurt locker"に「棺」の意味があるとはどこかで読んだのだが、この映画のタイトルとして響いてこなかった。誰か説明して下さい、、、。
**レヴィ・ストロースが言ってたような。違ったらご免なさい。

2 comments:

Unknown said...

ハート・ロッカーと言えば最近こんなのありまして。(ページの下の方)
http://www.tbsradio.jp/utamaru/2010/03/1552010327.html

あと、これとか。
http://d.hatena.ne.jp/n-291/20100324/p2

AO (・_・ゞ

山平宙音 said...

ありがとう!

町山さんのも、宇多丸さんのも、対談も、全部しっかり聞いちゃいました。面白い! どちらの言っていることも納得できるような。

あと宮台、東、黒沢、村上の対談も一部聞いてこれも面白かった。

ありがとうございます。