Saturday, January 2, 2010

12/21 Garage a Trois ライブ音源

私が先日、雪の中を片道1時間半もかけて運転していったショーの音源が公開されています。
12/21/2009 Garage a trois @8 x 10, Baltimore, MD
http://www.archive.org/details/gat2009-12-21.sbd_16bit
サウンドボード音源です。(つまり客側からマイク1本で拾った音ではなく、ステージ上のマイクで楽器別に拾った音をPAが調整したものなので、平たく言って音が格段に良い!)会場にテーパーがおらず、音源を期待してなかったので嬉しい。


すみません、ショボい写真しか無くて。(良いライブは音に没頭してるので写真は撮れないし、つまらないライブは写真を撮る気にもならないの法則。)セカンドセットの最初、Saxophone sessionの写真です。Skerikは、サックスはいつも自分1人のことが多いから、今日は仲間と演奏できて嬉しい!って言ってました。

わたくしこのショーの直後からクリスマス休暇〜風邪〜年末年始で忙しくしてたもので書き損ねていましたが、こりゃー楽しいショーでしたよ。踊りまくってヘロヘロでした。(でも楽勝で雪や渋滞を抜け1時間半かけて運転して帰れるところが、アメリカの大地で鍛えられた私、って感じw)

先日私が訳したインタビューの言葉そのまま、めちゃくちゃロックしてたし、メンバーみんなちょー楽しそうでした。まるで走り回る悪ガキを面白半分に止めようと手を伸ばしたらいつのまにか追いかけっこに巻き込まれ、自分まで全力でゲラゲラ笑いながら走ってた、みたいな、気持ち良いくすぐったさが全身を駆け抜けるショーでした。キーボードのBeneventoはニコニコ可愛い顔で何してるのかと思ったらぐちゃぐちゃの落とし穴とか作ってて危ないし、サックスでリーダーのSkerikはいたずらっこそのまますばしっこくて気づいたら背後から大声で驚かして来たりするので、ギャーっとMike Dの逞しい二の腕に文字通りしがみつきたくなる。Stantonは3人の背後でこれまた複雑でけったいなリズム作ってるなと目をやるとドラムスティックが空中に浮いてて目を疑う(放り投げながら叩いている!)。


と思ったらSkerikは後ろを向いて、Mike Dのビブラフォン(鉄琴?)を叩き始める。思わずビデオを撮った。

目の前で起こっていることを形容するなら、躍動感、生命力、色えんぴつを1本選ぶなら緑。ステージ近くの客が音を浴び、激しいビートが戻ってくる度に雷に打たれたように動き出しては飛び跳ねるのを見て、このバンドが「ジャズ」とたびたび形容されることを思い出して笑ってしまう。ステージ前はメタルノリ。そういえば演奏前にskerikが"Do you guys like psychedelic jam bands?"って言ってて笑わせてくれた。 古い木の床が文字通り揺れていて、思わず新宿リキッドルームを思い出す。(あの頃は、フロアが揺れるなんてよくあることだと思っていたのに!) スタントンの変拍子キックに飛ばされ一瞬にして1999年の歌舞伎町にワープした直後にサックスの高音に首根っこ掴まれて2009年のボルチモアに引きずり戻される。タテノリ側の客の合間には、矢継ぎ早の展開に巻かれて口を開けポカンと立ち揺れる幸せな海藻系のひとびと。気持ち良さってのは、今、起こっていることしか有り得ないんだ、フォー!! 




The ongoing WOW is happening RIGHT NOW. 「マイルス・デイヴィスが若かった頃のライブを見てみたかった」とか「ジェームス・ブラウンの最盛期のダンスを目撃したかったな」とか「81年にアメリカでTalking Headsを見たかった」とか。それは、過去に誰かに起こった、あなたの頭の中から出られない仮想のショー。本当の出来事は、今、まさに今ここで起こっていること。伝説は、今ここでしか起こらない。

空気の震えは、部分的にしかコピーできない。記録されて後に残されるのは記録だ。出来事じゃない。ご馳走の写真を見るだけで満足していて良いのは、本物の囚人だけでしょう。金属が木が揺らした空気は、耳だけで感じるんじゃない。腕も髪の先もお腹の中も、音に触れられる。なでられる。なぶられる。吹かれる。演奏者のもとを旅立った音色が、あなたの全身を通り抜けてもなお、旅は続く。サックスや鉄琴はさすがの金属らしい迫力で、ぐわんぐわんと大きな波で空気を揺らす。こんなの録音じゃ伝わらないって。*

*(録音音源で「あたり」を付けることは出来るが。競馬新聞みたいなもんだな。)

フロアを巨大なクモの巣のように覆い始める鉄琴に、するどく切り込むサックス。空気を音で埋め尽くす快感。彼らはまだ若い。長年連れ添ったグループが、お互いの呼吸を知り尽くして最小限の音で静寂さえも柔らかく包み込むような演奏とは違う。とにかく思いついたこと全部やってみようと全員で決めたかのようなエネルギーに満ちている。彼らがやっていることが伝説になるかは、行った人ひとりひとりが、それぞれ決めること。もっと大事なのは、行けば踊れるということ。踊れば気持ち良いということ。気持ち良いことは、良いこと。今だけが、完全で、永遠なのだから。


ちなみに会場はこんな小さなバーでした。Love Baltimore.

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