Saturday, January 23, 2010

かわいい子には引っ越しさせよ

タイトル通りそのまんま。

29歳にして初めての本格的な引っ越しをしたわけなんだが、思った以上に新鮮な体験であった。さすが東京からワシントンDCは世界のちょうど反対側くらい遠いだけあって、文化に関するいろいろな謎が一気にとけた。哲学的な問いにもヒントがたくさん得られた。

かわいい子には旅をさせよ、と言うが、今どきもう旅は有効じゃない気がする。いや、旅が日常過ぎるから取り立てて言うこともないといったところか。

もちろん私が子供のころにわりと色んな場所に旅行で連れて行ってもらったのはラッキーだと思う。中学卒業までに、アメリカ各都市、ハワイ、バハマ、シンガポール、オーストラリアに行ったし、ニューヨークには小中高とそれぞれ1度ずつ旅行した。インターネット以前の海外旅行が子供に与えた影響はかなり大きいはずだ。毎回すごく楽しみだったし、旅先では小さなことにいちいち感動した。

子供は旅に連れて行った方がいいし、それから、引っ越しもさせた方が良い。中学や高校時代に1年交換留学をしたっていう友達はちらほらいるけど、良い親を持ちましたね。私は小学校くらいの時に外国に憧れて、「父が転勤で海外に引っ越し」とか羨ましい話だった。我が家は父親が自営の音響屋だったから海外転勤は無いし、オーストラリアでラーメン屋を開くとか一念発起しないかなぁって思ってた。でもやっぱり東京の、母が相続した土地に住み続けた。

外国に引っ越すのは大変だけど、カルチャーショックのたびに身軽になってる気がする。積もった汚れは洗剤で落ちるまで気づかないように、長く生きれば知らぬ間に要らぬ振る舞いまで身につけているものだ。1点から世界を見るより、2点から。できれば3点で面が確立する気がするが、それはまあ、今は置いておこう。そらねは引っ越しで立体メガネを得た! という感じ。

だが、それとて誰にでもあてはめられるものではないのかもしれない。私の父は、勉強の成績とか、どこの学校に行くのかについて、全く興味を持たなかった。旅行に連れて行ってくれたり、ミックステープを作ってくれたりしたけど、何かを指示された覚えはそういえば、無い。人並みに「良い大学に行けるように勉強した方が良い」と言い続けた母と、いわゆる親らしい振る舞いをしなかった父との間で、バランスよく育った。と、長いこと思っていた。父が亡くなってしばらくして、弟の全く違う意見を聞くまでは。彼は、父が進路に無関心で頼りなく、寂しかったという。これには驚いた。

子育てにはきっと、黄金のルールは無いんだろうな。私の両親は、子供は預かりもので、たまたま我が家にやってきて、大人になるまで育てる責任があるが、決して自分たちの所有物ではない、という方針だったらしい。私はこの考え方が好きだ。お互いを尊重する関係だったから、混乱した姿を大げさに隠す必要もない。それを受け止められるかどうかは、また別の話なのだ。何事も、良い面と悪い面が1セットだ。

今日は父の誕生日であった。生きていれば、58歳か。宙音は元気にしてますよ。



*小学生の頃に父がくれたミックステープ(カセット)には、オーリアンズ、キャット・スティーブンス、ボズ・スキャッグスなんかが入っていた。

No comments: